真っ暗闇の世界で
クリスマスとは、イエスキリストがこの世に誕生したことを喜び祝う時です。
しかし、聖書にあるキリストの誕生シーンを見ると、そこには、一人の尊い命の誕生を素直に喜べない世界が広がっていました。
イエスキリストが誕生した2000年前のユダヤは、真っ暗闇の世界だったのです。
キリストが生まれ出たユダヤは、当時、ローマという強国に支配されていました。
キリストの母であるマリアがまだお腹に子供を宿していた時、ローマ皇帝は、ローマの支配下にある全領土の住民に対して、住民登録をするようにとの命令を下しました。
この住民登録は自分の町で行わなければならなかったため、マリアは婚約者であるヨセフと共に、今いるナザレという町から100km以上も離れたベツレヘムまで行かなければなりませんでした。
妊娠中のマリアがそれだけの長距離を移動することは、お腹の中にいる子供の命に関わる大変危険なことでした。
二人は、ローマの命令に従ってベツレヘムに向かいましたが、ちょうどそこに滞在している時に、マリアは産気づいてしまいました。
二人は、すぐにお産のできる場所を探しましたが、結局、二人が辿り着いたところは、家畜小屋でした。
マリアは家畜小屋で初めての子供を生み、生まれてきた子供は、そこにあった飼い葉桶に寝かされました。
マリアとヨセフの二人は、出産という人生の一大事の中で、辛く悲しい現実を突きつけられていました。
ローマという国家権力の前に、ただ服従しなければならない理不尽さ、妊婦である自分のことを誰も理解してくれない苦しみ、初めての出産を家畜小屋で迎えなければならなかった不安、我が子を不衛生な飼い葉桶に寝かせてあげることしかできない悲しみ、まさに二人の眼前に広がっていたのは暗闇の世界だったのです。
これが、イエスキリストの誕生にまつわるクリスマスの真実です。
暗闇の正体
それでは、マリアとヨセフを襲った暗闇はどこから来たものなのでしょうか？
この暗さの正体は、人間の罪にあります。
当時のユダヤ社会を覆っていた暗闇は、人間の罪が権力と結びついたことによってもたらされたものでした。
その当時、ローマは破壊と殺戮によって支配を拡大しており、そんなローマに支配されたユダヤは、必然的に暗闇の世界になるしかありませんでした。
この世界の歴史を見てみれば、これまで人間の権力が多くの暗闇を生み出してきたことがわかります。
現代では、北朝鮮やミャンマー 、アフガニスタンなど、独裁的な国家権力のもとにある人々は、暗闇の中に置かれている。
そこは、国家という強大な権力の前に、正当な主張が通用しない暗闇の世界です。
この問題は、決して国家という大きな単位だけに限ったものではなく、職場や学校、家庭などでも同じです。
上司が部下に対して、先生が生徒に対して、親が子供に対して、不当に権力を振りかざすならば、ハラスメントや暴力によって暗闇の世界が生み出されます。
この世界の暗闇はすべて、神様を見失ってしまった人間が作り出しているのです。
暗闇の中で輝く光
しかし、クリスマスの物語の中心にあるのは、人間の罪ではありません。
クリスマスが指し示しているのは、ローマ皇帝という権力者でもなければ、マリアとヨセフを襲った辛く悲しい現実でもありません。
暗闇の世界に生まれてきたイエスキリストです。
父なる神様はイエスキリストを、2000年前のユダヤという暗闇の世界に送り込みました。
イエスキリストは、ローマという国家権力に虐げられているユダヤで、また、家畜小屋という薄暗く不衛生な場所で生まれてきました。
これが意味しているのは、神様は天高く私たちの手の届かないところから、この世界を見下ろしているのではなく、この世界の暗闇の真っ只中に共にいてくださるということです。
神様は、暗闇の世界に「光あれ」と光を造り、この世界に秩序を与え、今の世界を作られました。
この世界は、人間の罪によって再び暗闇の中に置かれましたが、神様は再びこの世界の秩序を回復させるために、イエスキリストという光を送りました。
この暗闇の世界に光として来られたキリストは、暗闇の中にあって輝く一筋の光です。
クリスマスの知らせ（＝キリストの誕生）は、この世界が暗闇のままに終わることがない希望のしるしなのです。
キリストによって、私たちが神様と共に世界を築いていくのであれば、そこは暗闇の世界から光の世界へと変えられていくのです。
