牧師ブログ

「沈黙の10ヶ月」

5ユダヤの王ヘロデの時代、アビヤ組の祭司にザカリアという人がいた。その妻はアロン家の娘の一人で、名をエリサベトといった。6二人とも神の前に正しい人で、主の掟と定めをすべて守り、非のうちどころがなかった。7しかし、エリサベトは不妊の女だったので、彼らには、子供がなく、二人とも既に年をとっていた。8さて、ザカリアは自分の組が当番で、神の御前で祭司の務めをしていたとき、9祭司職のしきたりによってくじを引いたところ、主の聖所に入って香をたくことになった。10香をたいている間、大勢の民衆が皆外で祈っていた。11すると、主の天使が現れ、香壇の右に立った。12ザカリアはそれを見て不安になり、恐怖の念に襲われた。13天使は言った。「恐れることはない。ザカリア、あなたの願いは聞き入れられた。あなたの妻エリサベトは男の子を産む。その子をヨハネと名付けなさい。14その子はあなたにとって喜びとなり、楽しみとなる。多くの人もその誕生を喜ぶ。15彼は主の御前に偉大な人になり、ぶどう酒や強い酒を飲まず、既に母の胎にいるときから聖霊に満たされていて、16イスラエルの多くの子らをその神である主のもとに立ち帰らせる。17彼はエリヤの霊と力で主に先立って行き、父の心を子に向けさせ、逆らう者に正しい人の分別を持たせて、準備のできた民を主のために用意する。」18そこで、ザカリアは天使に言った。「何によって、わたしはそれを知ることができるのでしょうか。わたしは老人ですし、妻も年をとっています。」19天使は答えた。「わたしはガブリエル、神の前に立つ者。あなたに話しかけて、この喜ばしい知らせを伝えるために遣わされたのである。20あなたは口が利けなくなり、この事の起こる日まで話すことができなくなる。時が来れば実現するわたしの言葉を信じなかったからである。」(ルカによる福音書1:5-20)

待ち望む期間

11月28日の日曜日から、教会はアドベントという期間に入りました。
毎年、クリスマスの1ヶ月前の日曜日から、クリスマスの前日、12月24日までがアドベントで、この期間はイエス様の誕生を待ち望む時です。

私たちにとって、何かを待ち望む期間というのは、心がワクワクする瞬間です。
旅行に行く予定があるとしたら、その計画を立てながら、当日を楽しみに待ちます。
子供が生まれてくる予定があるとしたら、お腹の子供と対面できる日を楽しみに待ちます。

今日の本文には、イエス様の誕生に先駆けて、洗礼者ヨハネという人物が誕生したことについて書かれていますが、この二人の誕生には、少し複雑な経緯があります。
ヨハネの父ザカリア、母エリサベトはすでに年老いており、しかもエリサベトは不妊の女性でした。
もう子供が生まれる希望がなくなっていた時に、突然、ザカリアの前に天使が現れて「あなたの妻は男の子を産む」と告げられたのです。

この言葉を聞いた時、ザカリアは「私は老人ですし、妻も年を取っています」と言って、天使の言葉に否定的な反応をしました。
その結果、なんとザカリアは神様から口を閉ざされてしまい、一切喋ることができなくなってしまいました。

その後、天使が告げた通り、エリサベトは身ごもり、男の子を産むことになりましたが、再びザカリアが話すことができるようになったのは、子供が誕生した時でした。
つまり、ザカリアは子供が生まれるまでのおよそ10ヶ月もの間、口を閉ざされてしまったのです。

なぜ神様はザカリアの口を閉ざすようなことをされたのでしょうか?
ザカリアの不信仰に対する罰として与えられたものだったのでしょうか?

10ヶ月の沈黙を経て…

この不可思議な出来事について理解するためには、それから10ヶ月後に起こったこと、つまり、ヨハネが誕生した場面を見てみる必要があります。

57さて、月が満ちて、エリサベトは男の子を産んだ。 58近所の人々や親類は、主がエリサベトを大いに慈しまれたと聞いて喜び合った。 59八日目に、その子に割礼を施すために来た人々は、父の名を取ってザカリアと名付けようとした。 60ところが、母は、「いいえ、名はヨハネとしなければなりません」と言った。 61しかし人々は、「あなたの親類には、そういう名の付いた人はだれもいない」と言い、62父親に、「この子に何と名を付けたいか」と手振りで尋ねた。 63父親は字を書く板を出させて、「この子の名はヨハネ」と書いたので、人々は皆驚いた。64すると、たちまちザカリアは口が開き、舌がほどけ、神を賛美し始めた。(ルカによる福音書1:57-64)

ザカリアとエリサべトの二人は、生まれてきた男の子に割礼を施す時になった時、その子に天使から告げられていた通りの名前であるヨハネという名前をつけました。
そうすると、ザカリアの口が開け、およそ10ヶ月ぶりに話すことができるようになりました。

ザカリアは久しぶりに話すことができるようになりましたが、その時にザカリアの口から初めに出てきた言葉は何だったでしょうか?
64節に「たちまちザカリアは口を開き、舌がほどけ、神を賛美し始めた。」とあるように、10ヶ月の沈黙を経て、ザカリアの口から出てきたのは、神様を賛美する言葉でした。

沈黙の意味

もし、ザカリアが喋れなくなったことを神様の罰として受け止めていたら、一番初めに何と言っていたでしょうか?
おそらく「よくもこんな目にあわせてくれたな!」と、神様のことを罵っていたのではないでしょうか?
しかし、10ヶ月もの長い間、一切口が利けなかったにもかかわらず、ザカリアが発した言葉は神様への賛美だったのです。

沈黙の10ヶ月がザカリアにもたらしたものは、神様を賛美する心でした。
初めに天使の言葉を聞いた時、ザカリアは神様の言葉とその計画を疑っていましたが、沈黙の10ヶ月を通して、神様を賛美する者へと変えられていったのです。
「時が来れば実現する神様の言葉」を信じられなかったザカリアは「時が来れば神様の言葉は実現する」とことを身をもって体験し、神様を賛美する者となりました。

ザカリアの場合は、神様によって物理的に口が利けなくなるという特別な体験をしましたが、私たちにも、思いがけない出来事によって、沈黙させられる時があります。
そういう時に、こう考えたくなるかもしれません。
「こんなことになったのは、自分の不信仰のせいではないか」
「これはきっと神様からの罰だ。罰せられないようにもっとしっかりしなきゃ。」

しかし、聖書が伝えている神様は、私たちの不信仰によって罰を与えるような神様ではなく、どれだけ足りなく、失敗を繰り返したとしても、私たちの弱さを理解してくださる神様です。
そして、私たちが立ち上がることができるように助けてくださる神様です。
私たちが沈黙し、何も言葉を発せられないほどに葛藤して悩んでいる期間でさえも、神様は私たちと共にいてくださり、私たちに寄り添ってくださるお方です。