牧師ブログ

「ソロモンの光と影」

ソロモンの光

神様はソロモンが求めた知恵を与え、さらには、求めなかった富と栄光まで与えると約束された。
この約束はその後、ソロモンの生涯を通して実現された。

知恵について言えば、全世界の人々が、ソロモンの知恵を聞くために、イスラエルを訪れた。
シェバという国の女王がソロモンの知恵を試すためにイスラエルにやってきたが、ソロモンは彼女が投げかけたすべての難問に答え、彼女はソロモンの知恵深さに驚き、称賛した。

富について言えば、ソロモンが得ていた歳入は「金666キカル」だった。
これは、今の金の価値に換算してみると、1,600億円近くに及ぶものである。
これに加えて、税金や貿易による収入、外国の王から得たお金や贈り物もあったわけで、生涯収入で考えれば、余裕で兆のレベルに達していた。

栄光について言えば、ソロモンはエルサレムに神殿を建てることができた。
父親のダビデが発案し、準備が始まったが、実際に建築に取り掛かり、完成させたのはソロモンだった。

このように、神様はソロモンの治世の初めに約束されていたことを、ことごとく実現してくださった。
聖書の中でも、ソロモンは神様から豊かな祝福を受けた人物の一人であると言える。

ソロモンの影

ソロモンの人生は、最終的に神様の裁きを受け、王から追放されて終わっていく。
一体、ソロモンの人生に何が起こってしまったのか?

ソロモンの心を迷わせたもののうち、最も大きなものは、外国人妻たちだった。
ソロモンはイスラエルの周辺諸国から、なんと1,000人もの妻をめとっていた。
それは、ソロモンが単に女好きだったからではなく、政略結婚として行われたことだった。

ソロモンは多くの外国人妻を迎えることによって、イスラエルの安定を図ろうとした。
実際に、その成果もあって、イスラエルは周辺諸国と良好な関係を築いていった。

イスラエルはソロモンの時代に、国際的に高い地位にまで一気に駆け上がっていった。
しかし、国に安定をもたらしてくれたはずの妻たちによって、結果的に、ソロモンとイスラエルは転落の一途を辿っていくことになる。

それは、ソロモンと外国人妻の関係が変化していく中で起こった。
ソロモンにとって外国からめとった妻たちは、国策の一環として行われたことだったが、時間が経つにつれ、ソロモンは彼女たちを愛するようになり、とりこになっていった。

するとソロモンは、愛する妻たちのために、彼女たちが信じている神々を礼拝できるように、異教の祭壇を作ってあげた。
これは「妻が望むことを叶えてあげたい」という純粋な優しさから出てきたことかもしれないが、そうするうちに、ソロモンの心は迷い、主なる神様から離れていったのである。

良い動機 ≠ 良い結果

ソロモンの心を迷わせ、神様から離れるきっかけとなったのは、外国人妻たちを思う「愛情」だった。
愛情というのは本来とても良いものであるはずだが、そこにも落とし穴が潜んでいた。

私たちは、自分の目に良いと思うことを選択する中で、神様から離れていってしまうことがある。
ソロモンが妻たちのために、異教の祭壇を作ってあげたのは、彼女たちを愛する想いからだった。
おそらくソロモンの心には、悪いことをしているという自覚はあまりなかったのではないか。

私たちは良い動機や良い心の中にも、そういう危険や罠が潜んでいることをよくわきまえておかなければならない。
良い動機までもが、悪いことに用いられてしまうことがある。

これによって、ソロモンは王の座を退くことになり、イスラエルもソロモンの次の世代に国が二つに分裂するという憂き目にあうことになった。
ソロモンは妻という最も近しい存在によって、信仰を失い、イスラエルは外からの攻撃ではなく、内側から崩壊していった。

私たちを襲ってくる敵は、どこか遠いところにいるのではない。
罪の罠にはまることのないように、いつも主なる神様を見上げ、主の御心を求めて生きていくことが、私たちの信仰を守る最善の手段である。