牧師ブログ

本当のメリークリスマス(その2)

世界で最初のクリスマスは、今のクリスマスからは想像もできないほど、異様な雰囲気に包まれていました。
それは、当時ユダヤを支配していたヘロデ王の暴虐によって、引き起こされたものでした。

「ユダヤ人の王が生まれた」というイエスの誕生の知らせを、喜びをもって受け止める人はほとんどいませんでした。
特にヘロデは、その知らせを聞いて恐れを抱きました。
それで彼はユダヤの王座を死守するために、ベツレヘム周辺の幼児を皆殺しにする命令を出したのです。

世界で最初のクリスマスにあったのは「メリー」なんかではなく、なんとか生き抜こうとするヨセフ一家の必死な姿でした。
権力と暴力の前に何の抵抗もできずに、幼子イエスを抱えながら国から国へと逃げ惑うちっぽけな人間の有様でした。

一体、世界で最初のクリスマスに何が起こっていたのでしょうか?
そこで行われていたのは、激しい主権争いです。
「誰が本当の王なのか?」という神様とヘロデの間で起こっていた争いです。

ヘロデは武力と権力によって国を治め、恐怖によって人々を支配しようとしました。
当時のユダヤ社会は、王の一言が絶対の時代です。
ヘロデとその息子のアルケラオが王位に就いていた時、彼らの命令によって、何千人という人々が殺されました。
しかし、結局ヘロデは国民から信頼を得ることができず、最後は病気にかかり、自分の子供にその王座を譲ることになりました。
最後は主権争いに敗れてしまったのです。

世界で最初のクリスマスに起こったことは、決して2000年前の昔話ではなく、今も世界中で起こっています。
人間が自分が本当の王であると思い込み、人々を支配しようとする姿は、今のリーダーもほとんど変わりがありません。

ユダヤ人の王として生まれたイエスを本当の王として受け入れず、自分が王となり、自分の王国を作ろうと人々を支配しようとする世界には、大きな苦しみが生まれています。

特に今の世界は「〇〇ファースト」という言葉が表すように、自分たちがよければそれでいいという風潮が蔓延しています。
自分の思い通りに動く世界を作るために、武力と権力によって他民族を排除し、報復を繰り返し、自分が世界の王であり続けようとします。

しかし、そのような人間の自己中心性こそが、人を傷つけ、失望させ、最後にはその命までも奪っているのです。

だから、私たちが問うべきことは「神が実在するとしたら、なんで世界から争いがなくならないのか?」ということよりも、むしろ「なんで人間は主権争いを繰り返しながら、何千年もの間、同じ過ちを繰り返しているのか?」という人間の罪だと思うのです。

(続く…)