収穫感謝祭
収穫感謝という祭りの起源は、17世期にまでさかのぼります。
当時、イギリスにいたピューリタンと言われるクリスチャンたちは、宗教上の迫害を受けていました。
それで、信仰の自由を求めて、総勢102名の人々がメイフラワー号に乗り込み、アメリカ大陸を目指しました。
約2ヶ月の航海の末、アメリカの北部にある今のマサチューセッツ州に到着することができましたが、すぐに冬が到来したため、寒さや飢えによって、半数もの人々は冬を越すことができず、命を落としてしまいました。
その後、生き残った人々は、原住民の助けにより、土地を耕し、作物を育て始めました。
そして、秋になると、最初の収穫を得ることができました。
それで、彼らは自分たちを助けてくれた原住民の人々を招待して、多くの収穫を与えてくださった神様に感謝する集まりを持ちました。
これが、収穫感謝祭の始まりだと言われています。
そこには、苦難から救ってくださった神様への感謝と、苦難の中で手を差し伸べてくれた現地の人々への感謝を忘れないように、という思いが込められています。
イスラエルの収穫感謝祭
実は、聖書を見ると、イスラエルでも毎年、収穫を祝う祭りが行われていました。
春には、大麦を収穫する祭りがあり、その50日後には、小麦の収穫を祝う祭り、そして、秋になると、仮庵祭という収穫祭が行われました。
これらはすべて、モーセの時代にまでさかのぼるものであり、すべて律法によって規定されていたものでした。
今日の本文には、イスラエルの民がエジプトを脱出してカナンの地に入った後、初めて得た収穫物を捧げることについて、モーセが民に語っている場面です。
モーセはカナンに入り、そこに住む時には、その地から取れるあらゆる作物の初物を持って、礼拝所へ行くようにと命じています。
そして、祭司に向かって「私は主が私たちに与えると先祖たちに誓われた土地に入りました」と言って、持ってきた作物を祭司に手渡して、イスラエルの民を救い、約束の地であるカナンへと導き、その地で作物の実りを与えてくださったのは神様であるという信仰の告白をします。
これら一連の行為が意味することは何でしょうか？
それは、カナンの土地もその地で得た収穫物もすべて、神様が与えてくださったことに感謝を表す行為であるということです。
収穫物のうち、その初物を主に捧げるという儀式は、イスラエルがカナン定住後、毎年決まって行われました。
豊かさの中で…
イスラエルにとって、カナンの地で生活を始めるということは、これまでの家畜を飼い慣らしながら移動する生活から、一つの場所に定住する生活へと変わることを意味しました。
カナンで新たに農業を始めることになった民の生活は、農作物によって支えられるようになりました。
カナンの地は「乳と蜜の流れる土地」と言われるように、作物を育てるのに適した地域だったので、豊かな実りを得るようになったのです。
これらはすべて神様によって与えられた豊かさでしたが、イスラエルの民はその豊かさの中で神様を見失っていきました。
アメリカで始まった収穫感謝祭も、ピューリタンたちがアメリカの地で最初の実りを得た時は、神様に感謝し、現地の住民たちとも作物を分かち合いました。
しかし、次第に豊かさを手にする中で、初めの感謝の心を忘れていきました。
ヨーロッパから移民した来た人々は、現地の人々の土地を奪い取り、迫害するようになったのです。
初めの感謝を忘れ、人々は感謝すると言っても、自分たちの生活が豊かになったことを感謝するだけでした。
豊かさを与えてくださる神様
こういう歴史が明らかにしていることは何でしょうか？
それは、人はどんなに大変な苦労を経験したとしても、自分たちの生活が豊かになると、すぐに感謝の心を失ってしまうということです。
そして、感謝の心と共に、神様をも見失っていきやすいのです。
だからと言って、もちろん、豊かになることは悪いことではありません。
初めから豊かさなんてものは求めずに、貧しく質素に暮らすべきだというわけでもありません。
イスラエルの民にカナンの土地を与え、その地であらゆる作物の実りを与えてくださったのは、紛れもなく、主なる神様です。
神様は霊的にも、物質的にも、私たちに豊かさを与えてくださるお方です。
そうだとすれば、そこで大切になることは、自分の豊かさがどこから来たものであるのかを忘れないことです。
豊かな時も、貧しい時も、いつも神様を覚えつつ、その神様に感謝を捧げながら生きていくことこそ、私たちの心と生活を守る秘訣なのです。
