牧師ブログ

「赦してやれって言われても•••」

3「あなたがたも気をつけなさい。もし兄弟が罪を犯したら、戒めなさい。そして、悔い改めれば、赦してやりなさい。4一日に七回あなたに対して罪を犯しても、七回、『悔い改めます』と言ってあなたのところに来るなら、赦してやりなさい。」5使徒たちが、「わたしどもの信仰を増してください」と言ったとき、6主は言われた。「もしあなたがたにからし種一粒ほどの信仰があれば、この桑の木に、『抜け出して海に根を下ろせ』と言っても、言うことを聞くであろう。」(ルカによる福音書17:3-6)

条件付きの赦しでいい?

聖書では「赦しなさい」とか「愛しなさい」とか言われていますが、こういうメッセージを聞きながら、自分の中にはどうしても赦せない、愛せない人がいるとすればどうでしょうか?
「赦したい思いはあるけど、心がついていかない」
「いや、そもそも赦しなさいなんていう話にはちょっと無理があるんじゃないか」
「聖書の言葉通りにできない自分は、ダメなクリスチャンなんじゃないか」
このように「赦しなさい」という聖書の言葉は、私たちにいろんな葛藤や思いを生じさせます。

聖書にある「赦しなさい」というメッセージをどのように受け止めて、赦すことについてどのように考えるべきでしょうか?

本文の中で、キリストは誰かが罪を犯したなら、まずその人を戒め、それで悔い改めるのであれば、赦しなさいと言っています。
しかも、何度繰り返し罪を犯したとしても、その都度「悔い改めます」と言うのであれば、赦しなさいと。

キリストは「何がなんでも赦しなさい」ではなく「悔い改めるのであれば」という条件をつけています。
相手が「悔い改める」という条件をクリアするのであれば、赦しなさいということです。

そうだとすると「相手が悔い改めなければ、別に赦さなくてもいい」と言うことになるのでしょうか?

無条件の赦し

私たちに対する神様の赦しというのは、条件付きのものではありません。
ルカによる福音書の23章をみると、キリストが十字架につけられ、殺される場面が書かれています。
そこには、キリストが十字架にかけられた直後に言われた言葉として、こう書かれています。

そのとき、イエスは言われた。「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです。」(ルカによる福音書23:34)

キリストは自分を十字架にかけるよう要求した人々を赦してほしいと、父なる神様に祈りました。
なぜなら、自分が何をしているのか知らないから、つまり、救い主を殺そうとしている子tを知らないでやっていることなので、赦してほしいということです。
ここに表されているのは、無条件の赦しに他なりません。

また、使徒パウロは、ローマ書の中でこう語っています。

しかし、わたしたちがまだ罪人であったとき、キリストがわたしたちのために死んでくださったことにより、神はわたしたちに対する愛を示されました。(ローマの信徒への手紙5:8)

キリストは、私たちが悔い改めることも何も知らない罪人であった時に、すでに私たちのことを赦してくださり、愛してくださったのです。
ここにも「自分の罪を認めて、悔い改めれば」いう条件は一切ありません。

このように、神様は何一つ条件をつけることなく赦してくださったのであり、これこそまさに「神の愛」です。

赦せない自分とどう向き合うか

私たちに対する神様の愛のように、私たちも誰かのことを無条件で赦すことができれば言うことはありません。
ただ、現実的に、私たちの心はなかなかそこに追いつきません。
赦しという問題は、複雑な要因が絡み合っており、そんなシンプルに解決できることではないからです。

だからこそ、キリストは「相手が悔い改めれば、赦してやりなさい」と言われたのかもしれません。
この言葉は、私たちの心に寄り添った現実的な命令であり、赦しの勧めに聞こえます。

赦しの問題について考える時、たとえ相手に謝られても赦せないこともあります。
相手が死刑判決を受けて、その存在がこの世から消え失せたからと言って、それですべて解決できるような問題でもありません。

そうだとしたら、赦すということは、究極的には相手がどうこうということではなく、こちら側の問題ということになります。
私の心が現実的に相手を赦せるかどうか、ということです。

そこで大切なことは、今の自分の正直な気持ちを受け入れるということだと私は思うのです。
「赦しなさい」と言っている聖書の言葉通りにできないから、ダメなクリスチャンだとか、不信仰だとかいうわけでは決してないと思います。
もし、どうしても赦せないのなら、その赦せない心がある自分を神様の前で受け入れることです。
今の自分の正直な姿で神様の前に進み出ることこそが、信仰であるからです。
そこから、赦しの問題がスタートしていくのではないでしょうか。