クリスマスの粉砕を目指す人々
皆さんは今年のクリスマスはどのように過ごされたでしょうか？
先週の礼拝で「革命的非モテ同盟」の話をしました。
毎年、東京の渋谷でクリスマス粉砕のデモが行われていますが、今年は代表の方が、諸事情によりデモの申請に行くことができず、開催されなかったようです。
クリスマス粉砕を目指す戦いは来年以降も続いていきそうだが、クリスマスを喜び祝う人々がいる一方で、それを粉砕しようとする人々がいるという事実は、クリスマスの光と影を表しているように思います。
実は、2000年前、イエスが生まれた時、すべての人が幼子イエスの誕生を喜んだわけではありませんでした。
約2000年前、イエスが生まれた当時、ヘロデ王という人がユダヤ地方を支配していました。
ヘロデ王は、イエスが生まれたことを聞いた時、不安を抱きました。
ヘロデ王はイエスの誕生について、占星術の学者たちから「ユダヤ人の王が生まれた」という話を聞きました。
ユダヤ人の王が生まれたということは、新しい王が生まれたということになります。
それはヘロデにとって、自分がユダヤの王から退けられて、ユダヤに新しい王が立てられることを意味しました。
それでヘロデは、イエスが生まれたことを恐れたのです。
その後ヘロデは、占星術の学者たちを呼び集めて、イエスを探し出そうとしました。
この時ヘロデは「私も行って拝もう」と言っていますが、これは子供を探し出すための口実です。
ヘロデの本当の目的は、イエスを殺すことにありました。
メリーではないクリスマス
ヘロデという王は、ただの王ではなくヘロデ大王と呼ばれていたほどに、政治的な手腕に優れた王でした。
ただ、それと同時に、ものすごく残忍な面がありました。
ヘロデは、自分の王の座を守るために、妻や子供たちなど、家族を殺すこともありました。
占星術の学者たちは、幼子であるイエスに出会ったあと、夢の中で「ヘロデのところへ帰るな」というお告げを聞いたため、ヘロデの命令を無視し、そのまま自分の国へと帰って行きました。
このことを知ったヘロデは激怒しました。
ヘロデはベツレヘムとその周辺の2歳以下の男の子を、一人残らず殺させたのです。
占星術の学者たちからイエスの居場所を聞くことができなかったため、イエスが生まれたベツレヘムとその周りにいた子供たちを殺してしまいました。
このように、ヘロデはどんな手段を使っても自分の王座を守ろうとした王でした。
ヘロデにとって重要なことは、自分が王であり続けることだったのです。
ヘロデはユダヤの新しい王を殺したと思っていましたが、実はこの時、ヨセフとマリアは、イエスを連れて、家族みんなでエジプトに逃げていました。
それは、ヨセフが天使から、ヘロデがイエスを探し出して殺そうとしているということを告げられて、その日の夜のうち逃げていたためでした。
結局、ヨセフとマリア、そして幼子イエスは、ヘロデが死ぬまでエジプトで暮らすことになりました。
ヘロデが死んだ時に、ヨセフに夢の中で天使が現れて「ユダヤに帰るように」と言われ、ようやく一家は三人でユダヤへと戻ることができました。
しかし、ヘロデが死んだ後、今度は、ヘロデの息子であるアルケラオが、父親の跡を継いでユダヤの新しい王になっていました。
その時にまた夢でお告げがあり、今度は、ガリラヤ地方のナザレという町に逃げて行きました。
「ナザレのイエス」と言われる通り、イエスはその後、この町でずっと暮らしていくことになります。
ヨセフとマリアは、住民登録のために、ナザレからベツレヘムへ行き、イエスが誕生した後、ベツレヘムからエジプトへ、エジプトからベツレヘムへ、さらにベツレヘムからナザレへと、しばらく逃げ続けることになりました。
これを見たら、とてもじゃないけど「メリークリスマス！」と言えるような雰囲気ではなかったことがわかります。
全然、メリーな状況ではありません。
世界で最初のクリスマスは、ヘロデという一人の王様の暴挙によって、私たちが知っているクリスマスとは全く異なる悲惨な状況にありました。
権力と暴力の前に何の抵抗もできずに、多くの子供たちの命が奪われ、また、生まれたばかりの幼子を抱えながら、国を追われる家族がいたのです。
激しい主権争い
どうしてそのようことが起こってしまったのでしょうか？
そこで起こっていたことは、激しい主権争いです。
「誰が本当の王なのか？」という、神の国とヘロデの王国との争いです。
ヘロデにとって「ユダヤの王が生まれた」という知らせは、自分の王国を脅かす恐ろしい話でした。
そのため、ヘロデは生涯、自分がユダヤの王であり続けるために、家族や多くの子供たちの命を奪いました。
ヘロデは、権力と暴力によって国を治め、恐怖によって人々を支配しようとしたのです。
特に当時のユダヤ社会は、王の一言が絶対の時代です。
ヘロデとアルケラオが王だった時、彼らの命令によって、何千人という人々が殺されました。
しかし、結局ヘロデ王は、国民から信頼を得ることができず、最後は病気にかかり、王の座を追われることになりました。
ヘロデは主権争いに敗れ、ヘロデの王国は終わることになりました。
世界で最初のクリスマスに起こったことは、決して2000年前の昔話ではなく、今も世界中で起こっていることです。
人間が、自分が王であると思い込み、人を支配しようとする姿は、今の時代も変わりません。
人間が自分の国を作ろうと、人を支配しようとする時、そこでは大きな苦しみが生まれます。
人間はいつの時代も、人を傷つけ、落胆させ、ひどい場合には、その命までも奪ってしまいます。
この2000年間、人間の姿はほとんど変わっていません。
本当の王
私たちは世界で最初のクリスマスを見ながら「神様がいるなら、どうしてこんな悲劇的なことが起こるのか？」と思うでしょう。
しかし、それと同時に私たちが問うべきことは「なんで人間は主権争いを繰り返しながら、同じ過ちを繰り返しているのか？」ということだと思います。
私たちが抱えている問題というのは、単にモラルや倫理の問題ではありません。
神様の代わりに自分が王となってしまっていることです。
ヘロデ王のように、自分の思い通りの国を作ろうとしてしまう高慢さです。
まさにこれが、歴史を通して、人間が犯し続けてきた罪だと言えます。
権力や暴力だけではなく、知識の力やお金の力など、あらゆる力によって、自分や周りの人をコントロールしようとするなら、それはヘロデがやっていたことと同じことです。
しかし、私たちの希望は、そんな戦慄の世界に、神様はご自分の独り子である、イエスを遣わしてくださったことに見出すことができます。
神様を追い出し、自分の国を作ろうとする世界の中に、神様は自ら来てくださいました。
2000年前のクリスマスという出来事は、イエスが本当の王であることを、明らかにするためでした。
この世界の歴史を見ると、ヘロデのような力を持っている人によって、動いているように見えます。
私たちの人生も、抵抗できないいろんな力に振り回されていると感じることもあると思います。
しかし、この世界の歴史において、本当の王はイエスです。
イエスという王は、人間の王のように何かの力によって人々を支配し、コントロールすることはありません。
イエスは、愛をもってこの世界とそこに生きる私たちに仕えてくださる王です。
人間の王を治める本当の王が、この世界にはおられます。
イエスこそ、王の王であり、この世界において私たちと共に生きてくださる愛の王なのです。
